こんにちは、マサキッチンブログです。
今回は、日本の食卓に出てくるカレーライスの歴史について深掘りしていきたいと思います。
“カレーに福神漬け”の誕生秘話
カレーライスの付け合わせとしてらっきょうとともに欠かせないものと言えば『福神漬』です。
『酒悦』の主人、十五代野田清左衛門が発案から約10年かけて完成させ、1886年頃に販売を始めたと言われています。
大根、ナス、カブ、瓜、しそ、レンコン、刀豆の7種類の野菜を醤油やみりんで漬け込んだ珍しい漬物は大評判になりました。
名前の由来は、当時の流行作家だった梅亭金鷲が、『酒悦』の傍にあった不忍池に、七福神の一人である弁天様があったことからその名を命名したという説や、福神漬けさえあればご飯がどんどん進むため、おかずがいらず知らず知らずにお金がたまる縁起の良い漬物だ、これは福の神も一緒に漬けてあるのだろうと、そう呼ばれるようになったという説などがあります。
この福神漬けを初めてカレーに添えたのは、1902、3年頃、日本郵船ヨーロッパ航路の一等食堂であったといいます。
当時付け合わせとして出していたチャツネ(野菜や果物をスパイスやビネガーなどで熟成させたインドの調味料)が切れてしまい、福神漬けに切り替えた結果、大好評となり、カレーのお供として定番化。
福神漬けが受け入れられた理由としては、その甘さがカレーをマイルドにしたり、醤油が隠し味になったり、野菜の歯応えがいいといったことが挙げられます。
ちなみに、二、三等客室の付け合わせは、たくあんであったらしいです。
カレーの3大具材は日本特有のもの!?
家庭で作るカレーの代表的な具といえば、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモですね。
どれが欠けてもカレーは成立しないほど、なくてはならない具材ですが、世界ではそれらの具材を使ったカレーを見ることはありません。
実は日本のカレー独自のレシピなんです。
ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ、は明治時代に日本に伝えられ、一般にも入手しやすくなったのは明治の終わり頃とされています。
栄養バランスも彩りもいいこれらの野菜はカレーに最適ということで、1911年刊行の『洋食の調理』とうい本で、これらの野菜を使用したビーフカレーのレシピが初めて紹介されました。
カレーの語源とされるインドの”カリ”で使われるスパイスは?
カレーの語源ではないかと言われているインドの料理『カリ』とは、様々なスパイスを使いながら水や水牛のバターを加えていく料理の総称です。
ここで使われるスパイスを分類すると『着色用』『香味用』『香りづけ兼臭み消し用』の三つに分ける事ができます。
それぞれの役割をもつスパイス群から、合わせる具材や家族の体調に合わせて使用するスパイスが決められるというわけです。
インドの家庭で『カリ』を作る際、一般的に使われるスパイスとしては、『着色用』にターメリック、『辛味用』に唐辛子やコショウ、ショウガなど、そして『香りづけ用』にはカルダモンやクミン、コリアンダー、シナモン、クローブ、ローレル、ナツメグなどが挙げられます。
スパイスについて詳しく解説した記事はこちら⬇︎
カレー粉知らずのインド人
インドには出来合いのカレー粉なるものは存在しません。
料理に合わせて自在にスパイスを選び、自分で挽いてブレンドするのが当然で、料理人のたしなみであると言っても良いかもしれません。
しかし、外国人にとっては至難の業。
この味をなんとか自国で再現したいと考えたのが東インド会社のメンバーだったヘイスティングです。
1772年頃、彼はカレーに使われるスパイスのセットと、彼が暮らしていたベンガル地方の主食であった米を持ち帰りました。
このスパイスのセットこそ、後のカレー粉の原点になります。
18世紀末になり、イギリスのC&B(クロス&ブラックウェル社)によってカレー粉はようやく商品となって誕生します。
このパウダーは高額にもかかわらず長く日本のカレー料理人たちに絶大な信頼を寄せられることとなりました。
ちなみに日本製カレー粉第一号は1905年、薬種問屋の今村弥兵衛により生み出された『峰カレー』だそうです。
カレーを国民食にした立役者、ルウの誕生
野菜を切ってメインの具材(肉や魚)を炒めて煮込んだら、あとはルウを割り入れるだけです。
カレーの魅力は『美味しさ』や『栄養』のほかに、この『調理の手軽さ』も大きいのです。
カレー粉を油脂で固めたルウには香り高いスパイスの風味のほかに、旨味が加わった優れもの。
その形状にはペーストやフレーク、固形と様々なタイプがありますが、売られているのは、扱いやすく、軽量の手間も省けるという理由から、固形のルウが後雨滴に多いです。
この固形のルウを日本で初めて開発したのは大阪の『ベル製菓』(のちのベル食品工業株式会社)で、1950年に板チョコの形状を模した『ベルカレールウ』が発売されました。
薬膳・アーユルヴェーダ・スパイスの資格を取得取得講座ライスカレーとカレーライス
日本にカレーが入った頃はカレーに”ライス”の名称はまだ付いていませんでした。
ライスカレーの名付け親はクラーク博士という説があります。
また、小菅桂子氏はその著『カレーライスの誕生』で明治維新の世の中では、”ライス”という響きが新鮮に聞こえたのではないかと述べています。
”ライス”がつくだけで、ハイカラな印象が一層強まります。
では、いつ頃からカレーライスになったのでしょうか。
井上岳久氏『カレーの雑学』によると、その転換期は1964年の東京オリンピックの頃です。
当時は『ライスカレーは家庭の貧乏カレー、カレーライスはカレーとライスが別々に出てくるハイカラで気取ったカレー』というものだったとか。
インド式カレーはインド独立の味?
新宿『中村屋』と銀座『ナイルレストラン』。
どちらも日本に本格的なインド式のカレーを紹介した老舗として有名ですが、これらのレストラン誕生の裏にはインドの独立運動家たちが大きくかかわっています。
20世紀初頭、インドではイギリスからの独立運動がうねりをあげていました。
『中村屋』のラシュ・ビハリ・ボースはインド総督襲撃をきっかけに日本へ亡命、彼をかくまったのが『中村屋』の相馬夫妻でした。
一方、『ナイルレストラン』の創業者A.M.ナイルも日本に留学し、本格的に独立運動に身を投じます。
この時、すでに日本に帰化していたボースと出会い、二人は日本という地からインド独立運動に大きな役割を果たしたのでした。
ボースは危険を顧みず我が身をかくまってくれた相馬家に恩返しのつもりで母国インドの本格的なカレーを伝授します。
その味を供する中村屋の喫茶店が誕生したのは1927年のことでした。
そしてインドの独立から2年後の1949年、今度はナイルが日印親善を願い『ナイルレストラン』を開業しました。
まとめ
日本の食卓でお馴染みのカレーライスの歴史を深掘りしてみました。
マサキッチンブログでは、スパイスについても詳しく解説してます。
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スパイスを使って簡単にカレーを解説する
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